春の章
出会い
1.
新緑の森の中を颯爽と駆け抜ける一台の車・・・・
グレートの高そうなその車の中には・・・・一組の親子が乗っていた。
助手席の少女は・・・窓外に目をやりながら・・・・いたくご立腹気味のようであった。
「なぁ・・・・サーシャ・・・・いい加減機嫌を直してお父さんにかわいい笑顔・・・見せてくれないか?」
運転席の父親は・・・・少し遠慮がちに娘に声をかけた・・・・がその次の瞬間
「私はサーシャじゃないもん!澪なんでしょ?!」
鋭い眼光一過・・・厳しい言葉が帰ってきた。
「じゃ、澪・・・・いい加減機嫌直してくれないか?お父さんだって好きでお前をこんな山の奥に連れてきたわけじゃないぞ」
「お父様のうそつき・・・・」
小ぶりな顔には不釣合いなほど大きなアーモンド形の瞳に涙をいっぱいにためて・・・・少女・・・・
澪は父に訴えた。
「私・・・地球に帰ってこれば・・・お父様や進おじさまや・・・・ユキママとだってといっしょに暮らせるって思っていたのに・・・今更全寮制の学校に入れだなんて・・・・・」
「サーシャ・・・澪・・・・でもね・・・君には必要なことなんだよ?同じ年頃の女の子達と生活を共にするということも・・・・」
彼女の父・・・・古代守は本当に辛そうに彼女の・・・そのかわいらしい顔を見つめた。
まだ・・・子供っぽさが残りながら・・・・その血からあふれ出るような気品をかもし出した少女・・・・
その存在自身が・・・高貴な・・・・そしてそれ故に哀しい運命を背負わざる得なかった娘・・・
彼女は・・・・古代守と・・・そして今はなきイスカンダル星の女王・・・・スターシャとの間に生まれた一人娘。
今は・・・・イスカンダル王家・・・いや、イスカンダルの血を引き継ぐ唯一の者・・・・
それがサーシャの秘密・・・・
「お父様・・・・地球に戻ってきたら一緒に暮らせるって言ってみえたじゃない・・・・私・・・・イカルスでそれを本当に楽しみにしていたのよ?」
サーシャの言葉に守は言葉が詰まった。
「イカルスでは・・・・寂しかったのかい??」
「え?・・・・・ううん・・・・寂しくなんかなかったわよ。みんなかわいがって下さったし・・・・真田のお義父さまもかわいがってくださったもの・・・・」
サーシャはそういうと車のパワーウィンドゥのスイッチを入れた。
音もなく窓が降りて・・・・外の爽やかな風が車内で踊り始めた。
彼女の金色の長い髪が風になびく・・・・・
「・・・・イカルスには風も緑もなかったわ・・・・深黒の宇宙に空気を通さないから瞬かない星・・・・
窓から見える景色はゴツゴツとした岩ばかり・・・・」
サーシャは車窓を流れる景色に目をやりながら呟いた。
「・・・・・でも天文台の中は楽しかった・・・・。でもね・・・・そこにはお父様もおじさまもいなかったのよ。いくらみんなが私に優しくたって・・・・・お父様・・・・いて欲しかったんだもん・・・・私にはお父様しかいないのに・・・・お父様しかいないのよ?」
「サーシャ・・・・君がイカルスに行った理由・・・・行かなくてはならなかった理由は・・・」
「聞いているわ・・・お義父さまから・・・・私の身体が地球にはあわなかったって・・・それに急激な成長でまわりを戸惑わせないようにイカルスに預けられたんでしょ?・・・・・私・・・・自分の身体を呪ったこともあったわ・・・・私が地球でお父様達と生活ができないのはお母様の血のせい・・・・
イスカンダルの血がそうさせているんだって・・・・・・仕方がないことだってわかっている
けど・・・・・そう思わずにいられなかった・・・・・お母様は私が地球に行ったらどうなるのか・・・そこまで考えてらっしゃらなかったのね?」
サーシャは自分の膝頭辺りをジッと見つめながら吐き出すように呟いた・・・・。
「サーシャ!何をいうんだ!」
守は彼女の言葉に少し怒りを覚えたように一瞬きつく彼女を見据えた。
その瞳の鋭さに彼女は“自分が言ってはならない言葉”を吐いてしまったことにすぐ気がつきばつが悪そうに押し黙ってしまった・・・・。
彼女は今・・・・地球上の娘で言うところのちょうど思春期世代・・・・自分の周り・・・自分の置かれた立場に反抗もしたい年頃なのである。(ちょっと難しい乙女の年頃である)
深くは考えてはいない・・・・自分の置かれた立場に納得がいかず思わずはいてしまっただけの言葉である・・・
守にはわかってはいた・・・・。無理はないのである。
物心付く前に母を亡くし、父からは一人引き離され遠いイカルスの地で育ち、ようやくこの星に帰ってきたと思ったら、再びあれほど恋焦がれた父と今また再び引き離されようとしているのだから・・・・
「・・・・サーシャ・・・・まだ時間がある・・・・ちょっと休憩しようか・・・」
守は深くため息を付くとうな垂れるサーシャに声をかけた。
彼らが乗った車は景色のよい展望台へと滑り込んだ。
「今まで、君に話したことが無かったね・・・・スターシャ・・・・君のお母様の事・・・彼女はどれほど君を愛していたか・・・どれほど君の事を思っていたか・・・・」
守はエアカーを所定のスペースに停車させると、黙って外へと出た。
その後を追ってサーシャも黙ってトボトボと父の後を追った。
その瞳は涙で潤んでいた。
「君のお母様のスターシャは素晴らしい人だったよ。お父さん達は砂浜に落ちている芥子粒ほどのダイヤを見つけるほどの
確率で出会ったんだ・・・・・。あの美しいイスカンダルで・・・・」
彼は展望台から見える美しい風景に目をやりながら語りだした。もうこの世にはない美しい星を思いながら・・・
2.
父さんはね・・・・冥王星星戦で乗っていた艦が大破して・・・・戦いの際に大怪我をおっていたんだけど、ガミラスに捕獲されてね、捕虜にされて地球人のサンプルとしてガミラス星に護送されるところだった・・・・ガミラス星に運び込まれていたら間違いなく・・・・モルモットとして実験材料にされて殺されていただろうね・・・・しかし、運は父さんを見放さなかったようだ・・・・・。
護送艦がイスカンダル空域で航行不能になったんだ。ガミラス人は俺を無事運ぶことが最重要命令だったんだろうな・・・・
父さんを脱出ポッドに押し込み、宇宙空間に放り出した。
ところが・・・・放り出した場所がイスカンダルの重力圏内だったから・・・・父さんの乗った脱出ポッドはイスカンダル側にひきつけられて落下したらしい・・・・
父さんの乗った脱出ポッドはイスカンダルの海に落下した。マザータウンの海といって、イスカンダルの王宮にごくごく近い海にね・・・・それを王宮から見ていたお母様はすぐさま父さんの乗った脱出ポッドを回収して俺を助けてくれた・・・
え?父さんを脱出させたガミラス艦?あぁ・・・お母様の話だと・・・・父さんを脱出させてすぐにエンジン部から火が出たらしくて・・・・イスカンダルのダイヤモンド大陸部に墜落したそうだ・・・・
あの衝撃が後々まであの星の微弱な構造に影響を与えたらしいんだ・・・・。
彼女に助けられたとき・・・・父さんは虫の息だったらしい・・・
元々冥王星での戦いで瀕死の重傷をおっていた上、宇宙放射能病を併発し、その上にイスカンダルへの墜落の際にまた新たに怪我をしたらしいんだ・・・それだけの目にあって、命があったというだけでも奇跡的と言わずにはいられないんだがね。
ただ・・・・お母様の献身的な介護のおかげで、父さんは命を永らえることができた・・・・。
彼女には本当に感謝をした・・・・しかし、同時に助けられたことに嫌悪もしたんだ。
助けてくれた彼女を恨んでしまったことすらあるくらいだったんだよ。
俺一人が生き残ったところでどうしようもない・・・・あの戦い・・・無謀なまでの俺に最後まで付いてきてくれた仲間達はみんなを俺は見殺しにしてしまった・・・なのに、どうして俺一人が生き残って・・・こんなところで安穏と命を永らえているんだってね・・・
こんなことならいっそ、あの時俺を見捨てて死なせてくれた方がどれほど幸せだったろうか?って・・・・
その頃はそのくらいの想いしか浮かんでこなかったんだ・・・
自分以外の地球人類は全て滅亡してしまったんではないだろうか・・・・進・・・・弟の進ももうこの世にはいないんじゃないだろうかって・・・・・
全てに絶望し、自暴自棄になっていたんだね・・・・
父さんは・・・・身体の傷以上に心が病んでしまっていたようなんだよ。
そんな父さんを・・・スターシャは・・・・お母様は・・・・、
優しく慈愛に満ちた瞳で見守ってくれていた・・・・
そしてそんな父さんの傷が癒えようとした頃・・・ヤマトがお母様ののメッセージを頼りにイスカンダルへたどり着いたんだ。
父さんは驚いたよ・・・・地球人がこのイスカンダルにたどり着くことができたなんて・・・・正直なところ信じられなかった。
父さんの知っている地球の科学力ではこの星にたどり着くことができるどころか・・・・ほんの一光年すら旅することなど到底考えられなかったのだから・・・・
実のところ・・・父さんは知らなかった・・・父さんが冥王星で、ガミラスの捕虜になった後・・・イスカンダルからのメッセージが地球に届けられていたことをね・・・・
そのメッセージを元に、ワープ航法に耐えうる艦を建造し・・・・ガミラスを打ち負かし・・・彼らはイスカンダルへたどり着いたんだ・・・・それこそ多くの犠牲者をだしながら・・・満身創痍でね・・・・
地球はヤマトという力を生み出し、希望を求めてイスカンダルまでたどり着いたんだ
そして・・・・もっと驚いたことに・・・その艦の艦長代理として乗組員達を導いてきたのが・・・・
あの・・・大人しかった進だった・・・・あいつは父さんの想像を遥かに超えてたくましく成長していたんだ。
目覚めた瞬間・・・・やつの顔が飛び込んできたとき・・・わかるかい?父さんの驚きが・・・・
父さんは有頂天になった。地球人類の逞しさに。地球が救われることに・・・・そして・・・自分自身が地球に帰られる現実に!
でも・・・・父さんが帰ったら・・・スターシャはどうなる?
ヤマトがイスカンダルへ来たとき・・・・彼女の妹のサーシャ・・・・君の叔母様の死も同時に伝えられていた。
お母様はまさしく天涯孤独の女王になってしまった・・・・
父さんが帰ってしまったら、彼女はこの美しく寂しい星に一人生きていかねばならない・・・・
父さんは彼女に願った。「いっしょに地球に行って暮らそう」と・・・・
しかし・・・・彼女は首を縦には振らなかった・・・・・
そして・・・・父さんに告げたんだ・・・はっきりと・・・・
「あなたは地球の方・・・・ヤマトの皆さんと地球に帰ってください・・・・」
その言葉に・・・父さんは愕然としたよ・・・・。父さんはお母様を愛し始めていた。そして彼女も俺を愛してくれているのではないかと思っていたんだ・・・・ところがそれは全て俺の独りよがりだったんだと思ってね・・・・。
その時は気づかなかったんだ・・・彼女の思いに・・・・。
父さんは・・・・・地球に帰る決心をした・・・・ヤマトと共に・・・・
そして・・・・旅立ちのとき・・・・
スターシャはヤマトの艦内まで沖田艦長を見舞ってくれ・・・・父さんと・・・・艦長代理の進・・・
そして生活班長だったユキがデッキまで彼女を見送った・・・・
これで彼女と永遠の別れかと思うと、父さんの胸が締め付けられた。でも、彼女が父さんを求めていないのではどうしようもない・・・・。その思いで、彼女に別れの言葉を告げた・・・・
次の瞬間だったよ。
「愛している・・・・守」
彼女の唇からその言葉が漏れ・・・・瞳に涙が浮かんで・・・彼女がきびすを返した。
父さんはもう何も考えなかったよ。父さんの心はその言葉で全てが決まったんだから・・・・・
父さんはお母様を追いかけて、思いっきり抱きしめた・・・・・その瞬間地球を捨てて、イスカンダルの地を選んだんだ。
3・
それからの2年ほどの間・・・・父さん達には平和な時間が・・・そしてこの上もない幸せな日々が続いた・・・
その日々の中で、サーシャ・・・・君が生まれた。
父さん達は君の誕生を心のそこから喜んだよ。君こそ、俺達の幸せの結晶だったんだから・・・
父さん達は心のそこから君の幸せを願った。あの星で・・・あの静かで清らかな星で君が一生を送ることが君のためにいいことなのかどうか・・・
父さんとお母様は真剣に話し合った。君の行く末についてね・・・・
そして結論に達した。
父さん達はいつかは君を旅立たせることを・・・・たくさんの命が芽吹くこの地球へ・・・・
しかし、それはあの時ではなかった。
あんなことがなければ・・・父さん達はもう少し成長した君をここまで送り届けるつもりだったんだ。
ところが、イスカンダルが・・・・あのイスカンダルが・・・・
いきなりのことだったんだ。・・・・・あの連中が現れたのは・・・・
ガミラスであの連中が何かを採掘していることはわかっていた。
その「何か」をお母様は気づいていたようだった・・・・しかし、彼女は静観した。
ガミラス星は既に「死に絶えた星」であったし、イスカンダルへはとりあえず、何もしてこなかったから・・・・
「母として」の彼女は家族3人の静かな時間を選んだんだ。
ところが・・・・・ガミラス星の・・・・元々の住人・・・・デスラー総統が生きていた・・・
彼にしてみれば、自分の留守に採掘作業に現れたあの連中は、盗人のほか、何者にも映らなかったのだろう。
デスラーは彼らを蹴散らした。当然といえば当然のことだ・・・
しかし、その攻撃がガミラス星の寿命を縮めてしまった・・・・・。
既に地盤崩壊を起こしていたガミラスはその戦いの影響をもろに受けてしまった・・・・
地殻が裂け・・・・マントルが崩壊し・・・・あの星は・・・・・砕け散ってしまった・・・・・
イスカンダルはね、ガミラス星と同じ軌道を巡る2連惑星だったんだ。
2つの星の重力のバランスでお互いの星を保っていた・・・・
ところがその片方の星が消滅したんだ・・・・それがどういうことなのか・・・・君にはわかるかい?サーシャ・・・
・・・・・・・・・・
2連星の片方が消滅してしまうと残された片方もバランスを崩し・・・やがて崩壊の道をたどるんだ・・・・
イスカンダルはあまりに急激なガミラスの崩壊に耐えられず、すざましい勢いで宇宙を疾走し
始めた。
繋がっていた重力から引き離されて放り出されたような状態になったんだ・・・・
とんでもない嵐がイスカンダルの地表を襲い地表のあらゆるものを崩壊していった・・・・
人工の建造物はもちろんのこと・・・・イスカンダルの星自体が徐々に崩壊して行った
山は崩壊し・・・・星中のあちこちでマグマが放出され海の水は巻き上げられ・・・・激しい嵐となって地表を襲った・・・
父さん達はなすすべもないまま・・・・小さな君を抱きしめているしかなかった・・・・
父さん達は君だけでも助けたかった・・・・なんとかして地球に・・・進たちがいるあの地球に送り届けたかった。
デスラーたちは父さん達をなんとか脱出させようとイスカンダルを追いかけてきてくれた。
父さんもお母様も驚いたよ・・・・君は知らないだろうが、ガミラスのデスラーという男は冷血非道というイメージしか俺は持ち合わせていなかった・・・・いや、父さんだけではない・・・・お母様もだ・・・・
彼女が知っている彼も・・・・自分の星の民を守るために非道なまでに地球に攻撃を繰り返す男だったのだから・・・・
とにかく、彼は俺達を救おうと命を懸けてくれたんだ。そして・・・・地球に・・・・・ヤマトにも連絡を取ってくれた。
進たちや彼との間に何があったのかは・・・詳しくは父さんは知らない。だが、いつの間にか彼らの間には種族を超えた何かの信頼関係が生まれていたんだ。
進たちも・・・・デスラーも父さんたちを救おうと命を懸けてくれた・・・・しかし・・・・やつらは・・・・
イスカンダルを人質に取る形で、彼らに立ちふさがった。
父さん達を人質に取られてしまっては彼らなすすべを失ってしまった。
君のお母様を愛していたデスラーは敵に突っ込み、その命を投げ出してイスカンダルを守ろうとさえしてくれた・・・・
お母様はその戦いの全てを止めるべく・・・・命を投げ出したんだ・・・・
宇宙に広がろうとする戦いの火種を止めるべく・・・・
お母様は戦いに赴いたんだ。たった一人で・・・・
でも、その戦いに君を巻き込みたくはない・・・・愛している・・・・この宇宙全ての何よりも愛している君を巻き込むことなんてお母様は何が何でもできなかった。
お母様が君の入ったカプセルを最後の最後に愛おしそうに抱きしめて・・・・名残惜しそうに俺に託してくれたとき、父さんは気づくべきだったんだ。お母様の決心を・・・・
一瞬、君に目をやった瞬間に・・・・お母様は・・・・父さん達を脱出させてしまった・・・・
父さんに・・・・君を託して・・・・・
その瞬間、お母様の悲しみが父さんの心の中に流れ込んできたよ
君の成長だけを楽しみに・・・・父さんたち3人の家族の静かな時間だけを望んでいたお母様の願いが空しく散ってしまった瞬間だったんだから・・・・・
泣いていた・・・・・泣いていたんだよ・・・・お母様は・・・・君を思って・・・・
4・
「わかるね?サーシャ・・・・・確かに、君はイスカンダルのお母様の血を引き継ぎ、その特性のためにイカルスで生活をせざる得なかった・・・・・。だが、これからは普通の地球の少女として生きるすべを身に着けなくてはいけないんだ・・・・そして、この地球で幸せに生きて行かなくてはいけない・・・・それが・・・・お母様の願いだったんだからね・・・」
「・・・・・お父様とお母様がどれほど愛し合っていたのか・・・・お母様が私をどれほど愛してくださっていたのかが・・・・わかったわ・・・・お父様・・・・お母様は私がこの星で幸せになることを望んでいらっしゃったのね・・・・」
サーシャは山の向こうに沈もうとする夕日に目をやり呟いた・・・・
その表情は・・・・気丈だったスターシャを髣髴とさせた・・・・・
気高く美しかったスターシャ・・・・・サーシャは確かに彼女の気高さを受け継いでいた・・・・。
「学校って・・・・イカルスにあった訓練学校みたいなところなの?」
「ん?まぁ・・・・・あれも学校といわないではないけどな・・・・・君が行く学校で君が学ぶのは人間関係だ。君は同じ年頃の友人と付き合ったことなどないだろ?」
「人間関係?」
「友達だよ。これから生きていくうえである意味一番大切な存在だよ。ほら・・・・父さんと真田・・・・進や島君たちヤマトの仲間達・・・・みんな友達だ。信じあい、お互いに助け合い、相談して喧嘩もして、笑いあって・・・・そんな新しい友達をサーシャにも作ってもらいたいんだよ・・・・・。学んで、遊んで、ときには悪さもして・・・・そんな経験ができるのはやっぱり学校しかないだろう?君にも「この人なら!」という君だけの仲間を作ってもらいたいんだよ。時間がかかってもいい・・・・自分の目で見極めて・・・・・」
守はそういって娘の美しい金色の髪に手をのせた。
夕日に映えたその金色は美しく輝いていた・・・・
「私にも見つかるかな・・・・真田のお義父様みたいな人・・・・」
「おいおいおい・・・・あんな友人見つけてくるなよ。あいつみたいな人間はあいつだけでたくさんだ」
「お父様・・・・そんなこと言っちゃってもいいの?」
守の言葉に思わずサーシャは吹き出した
「いいんだ・・・・あんな変わったやつに付き合えるのは父さんしかいないんだからな」
ふんぞり返った守にサーシャは笑いかけた。
「きっと、真田のお義父様も同じことを言うと思うわ・・・・」
「ふふん・・・・たぶんな・・・・だが、そいつはお互い様だな」
「だがな・・・・きっとサーシャにも見つかるさ・・・・いい友人がね・・・・さ、いこうか」
「うん♪お父様」
吹っ切れたように明るく微笑んだサーシャは、守より一足先に車へ向かって駆け出した。
そんな後姿を優しげに見つめた守はふと・・・・沈み行く太陽に目をやった
“スターシャ・・・・・君が望んだようにサーシャは素直ないい子に成長しているよ・・・・これから彼女はまた一つ、地球に溶け込んでゆくために旅立つんだ・・・・俺は見守ることしかできない・・・・
でも、君の分まであの子を見守っていくよ”
「おとうさまぁ〜〜〜〜」
既に車の脇にたったサーシャは大きく父に向かって手を振っていた・・・・。