天 使 が 舞 い 降 り た
Chapter 3
南部に紹介された店で採寸を済ませた僕達は、食事をするためにレストラン街へ向った。
時間が少し早かったにもかかわらず、レストランの中は満席に近かった。
あいているテーブルに案内されるとメニューを見て嬉しそうにしている。
車で来ているため軽めの食前酒を頼んだ。
ユキはといえばディナーメニューのセットのケーキが気になっているらしい・・・
そんなユキを見つめていると、
「なに?何かついているの?」
と、手で顔を触っている。
「いや、何もついてないよ。
相変わらずユキは、食い気なんだなと思っていただけ・・・」
からかうようにいった僕に、
「どうせ色気なんてありませんよ。
ここのお会計進さんのカードでぜ〜んぶ払ってもらいますからね。
そうと決まれば追加のデザート頼もうかしら・・・」
「お、おいおい・・・ったく・・・
セットのケーキひとつでは足りなそうですからね、このお姫様は・・・」
ペロット舌を出しているユキに向かって呟いてみた。
そんなたわいもない話をしながら食事を済ませて家路に着いた。
部屋に入ったとたんソファーに体を投げ出すように座る・・・
なんだかとっても疲れてしまった。
こんなことを後何回行なわなければならないのだろう・・・
そう思っていたら知らず知らずのうちにため息を漏らしていた。
「進さん、お疲れ様でした。
疲れているときには甘いものがいいのよ、はい、ホットチョコレート。
甘さ控えてあるから大丈夫だと思うけど・・・」
差し出されたカップを受け取り、一口口に含む。
「うん、このくらいなら大丈夫だよ。
ふぅ・・・仕事しているほうが楽だよなぁ・・・」
ため息混じりに呟いた。
隣に座っているユキがクスクスと笑っている。
「なに笑っているんだよ・・・・・・」
「だって・・・ほんとに嫌そうなんですもの。
でもね、進さんが採寸している間に、ドレス見てもらっていたの。
ずいぶん前に選んだものでしょう・・・
だから少しデザインを変更してもらおうと思って・・・」
そう言ってカップに口をつけている。
「ドレス・・・・それって、さっき言っていた内緒のことなんだろう?
そんなこと俺に話してもいいのか?
まあ、話してくれても俺にはさっぱりわからないけどね」
カップに残っていたものを飲みほす。
「うふふふ・・・・・・、そういうこと。
それでね、ブーケのことなんだけど・・・・・・
進さんの知り合いの方で、フラワーアレンジしている人に頼みたいことがあるのだけど・・・
次のお休みのときに連れて行ってもらいたいの・・・」
「フラワーアレンジ・・・・?
ああ、悠ちゃん、平井悠子ちゃんのことかな?
彼女に何か頼みたいことって・・・」
不思議そうに尋ねてみる。
「もう、ずいぶん前になるけど、ウェディング・ブーケを作ってくれるっていっていたことあったでしょう?
変更したドレスのデザイン画をこの次の進さんの仮縫いのときにいただけることになっているの。
そのデザイン画を見てもらってブーケを作ってもらおうと思うのだけど・・・
まだ紹介してもらってなかったと思うのよね」
「そうだったかな?
あの後いろんなことがありすぎたものなぁ・・・
そのドレスのデザイン画は、俺に見せてくれないんだろう・・・?」
ちょっと不機嫌につぶやくと、
「当たり前でしょう・・・
当日のお楽しみって言わなかったかしら?」
ペロッと舌を出している。
「しょうがないなぁ・・・明日の帰りにでも寄ってみようか?
確かショッピングモールの中にあるって言っていたような・・・・・・」
ユキのほうを見ながら、
「明日の仕事帰りに一緒に行ってみる?」
「そうね、悠子さんに会ってみたいわ。
もし彼女の都合がつくなら一緒にお食事でもしてきましょうよ」
明日の計画を立てて、疲れた体を休ませるために寝室へ向かった。
一日中机に向かっている仕事もそろそろ終わりになるはず・・・
今日の予定は、ユキと一緒にショッピングモールまで・・・
幼馴染を紹介するのが、なんとなく恥ずかしいような・・・
くすぐったい気持ちを抑えながら今日の仕事を終わらせるべく机に向かった。
就業時間になるころに、ユキからメールが入る。
『6時にいつものところで・・・』
と、言う内容に、
『了解』の一言だけを返信する。
6時までもう一仕事・・・
いつもの場所(司令本部の中央エレベーターホールの脇にあるベンチ)で
待っていると、あわててかけてくるユキの姿が見える。
あまりあわてるところぶって言っているのに・・・
「進さん、お待たせ。
ちょっと遅くなっちゃったわね。
早く行かないとお店閉まっちゃうわよ・・・」
「そんなにあわてなくても大丈夫だよ・・・
ユキが来るまでの間に連絡してみたら9時ごろまで店は開いているそうだから・・・」
ユキに手を引っ張られるようにしながら地下の駐車場へ向かう。
ショッピングモールの中の案内板で、『ブーケ』の位置を確かめる。
中心より少しはなれたところにあることがわかり、二人で向かう。
「進さん、あそこに見えるのがそうじゃない?」
明るい笑顔を見せて聞いてくる。
「う〜ん、そうみたいだけど・・・中に入らないとだめかなぁ・・・
出来るだけこんなところに入るの見られたくないんだけど・・・」
「もう、何言っているの!進さんが紹介してくれないとお話できないでしょう・・・
それに、どんな人なのかも・・・」
小さな声で言ってくる・・・
「どんなって・・・普通の女の子だよ。
ユキのこと、とって食おうなんて思ってないよ」
安心させるようにそっと背中をさすってやる。
「ほら、いくよ・・・」
そう言って手を引いていく。
店の前まで来て中にいる人に声をかける。
「こんばんは。
先ほど電話したものですが、平井 悠子さんいらっしゃいますか?」
僕の声を聞いておくから一人の女性が出てきた。
「はい、平井は、私ですけど・・・
あら?進おにいちゃん、お久しぶりですね。
私に何か御用・・・」
そこまで言って言葉をとめる。
「久しぶり・・・
用があるのはこっちの・・・・・・
あっ、紹介がまだだったね。
ええっと・・・婚約者の森 ユキさん。
ユキ?こちらが、フラワーアレンジメントをしている、平井 悠子さん」
二人を紹介する。
やっぱりなんとなく恥ずかしいような・・・
「はじめまして、平井さん、森 ユキと申します。
今日はお願いがあって進さんにつれてきてもらいました。
よろしくお願いしますね」
「いいえ、こちらこそ、はじめまして。
ずいぶん前に進おにいちゃんにお話は伺っておりました。
お願いって・・・もしかしたらお兄ちゃん、結婚決まったの?」
振り返って聞いてくるので、
「うん、それで、ユキが君に何か頼みたいものがあるそうなんだ。
僕には内緒にしておきたいらしいのでね。
今日は、その・・・挨拶だけでもしておこうということになってね」
そういってユキのほうを見ると、
「そうなの、デザインをちょっと変更してもらっているので進さんのいないときにでも伺おうと思っていたの。
当日までドレスも見せてあげないのよ。
最初の約束からもう何年も待たされてお返しのつもりなの・・・」
ペロット舌を出しておどけて見せる・・・
「まったく・・・こっちの弱みを・・・」
ポツリとつぶやいた声が聞こえたのか、
「そうなんだ・・・おにいちゃんには内緒なのね・・・
わかりました。ブライダルブーケ引き受けさせていただきます。
ユキさんのドレスのデザイン画と、お兄ちゃんの着る服のデザインもわかるといいのですけど・・・
この次いらっしゃるとき一緒に持ってきてもらえますか」
「ええ、いいですよ。
進さんの服も当日まで誰にも教えるなって五月蠅いけど悠子さんになら見せてもいいわよね、進さん」
「嫌だって言ったって見せるつもりなんだろう・・・
詳しい日取りが決まったらまた連絡入れるからよろしくお願いするよ。
それに、わがまま言うかもしれないけどユキの想うようにしてあげてくれないかな・・・」
ちょっと照れながら頭を下げた。
「はい、はい、わかりました。
ユキさん、いろいろなお話聞かせてくださいね。
それからイメージ膨らましてアレンジしようと思っていますから・・・
それでは、私、まだやらなくてはいけないことあるので今日のところはこれで失礼しますね」
ぺこりと頭を下げて奥へ行ってしまった。
「食事でもと思っていたのに・・・悠子さんもお忙しそうね。
さて、これからどうしますか。予定通りお食事に連れて行ってくれるのかしら・・・」
ちょっぴり首をかしげて訊いてきたので、
「お姫様の気の済むように・・・どこにでも付き合いますよ。
ただし、時間も遅くなっているのでショッピングだけは勘弁してほしいのですけどねぇ・・・・」
「うん、もう!そんなことばかり言ってないで、お食事連れて行ってくださいね。
何を御馳走してもらおうかしら・・・」
そっと僕の腕に寄り添ってくる。
「高いものは勘弁してくれるかな?
この先どんな出費をさせられるかわからないのでね」
ちょっぴりおどけて見せる。
目的のレストランに入り、今夜の夕食が終わるころ、
「デザート頼んでもいいかしら・・・」
小さな声で聞いてくるので
「何を遠慮しているんだか・・・
好きなデザート頼んだらいいだろうに・・・
俺の分はいらないよ。これ以上甘いものは入りそうもないから・・・」
僕の言葉など聴いていないみたいに、瞳をきらきらさせて選んでいる。
「あまり甘いものばかり頼むと、ドレスのサイズ変わっても知らないぞ・・・」
「大丈夫ですよ。進さんこそトレーニングさぼっておなかの周りお肉つけないようにしてね」
冗談を冗談で返してくる。
二人してクスクスと笑ってしまった・・・
後から頼んだデザートをぺろりと平らげてしまったユキに、
「車のところに行く前にその辺散策してみるかい?
いろいろな花が咲いていたようだったけど・・・」
「うふふふ・・・進さんとお花見なんて初めてじゃないかしら?
桜並木は郊外まで行かないと見られないけれど、
花壇に咲いている花も可愛いから少し歩いて見ましょうね。
お家のベランダでも育てやすい花があるといいのだけど・・・」
寂しそうな声に
「どうして?」と聞いてしまった。
「だって、進さん、今は地上勤務が多いけど、
乗り込む艦が決まってしまえばまた宇宙に出てしまうでしょう・・・
一人部屋で待っているのも寂しいのよ・・・
子供でもいればまた違うのでしょうけど・・・・」
「子供・・・ね。ユキはすぐにでもほしいのかな?
それともしばらくは二人だけがいいの・・・?」
これからのことを考えながら質問してみると、
「出来ればすぐにでもほしいけれど・・・
ちゃんと結婚式を挙げてからのほうがいいのかしら・・・
進さんはどうなの?」
反対に質問されてしまった。
「俺は・・・ユキが生んでくれるならいつでもいいよ。
今すぐだと結婚式の準備なんかで忙しくなるだろうし、ユキ自身が大変なんじゃないかな?」
「それはそうだけど・・・」
「まさか、もう出来ていますなんてのは、ないんだろうねぇ・・・」
「それは、ありません!」
と、思いっきり否定されてしまった。
「それじゃ、コウノトリさんのご機嫌しだいってことでいいんじゃないかな?
あんまり悩んでいてもしょうがないし、まずは目の前の大事な結婚式でしょう・・・」
そっと肩を抱き寄せ車のとめてある駐車場へと歩き始めた。
仮縫いの日もあっという間に訪れてしまった。
前回と同じ部屋に案内されて、言われたとおりに服を着てみる。
「直すところありませんね。このまま進めて大丈夫でしょう・・・」
そういってきていたものを脱ぐように言われた。
「森さんのほうも、すぐ終わると思いますので外でお待ちください」
そういわれ部屋の外でしばらく待っていると、
「お待たせ」と、大事そうに抱えているものがある。
「何を持っているんだい?」
「進さんには内緒のもの。
これをもって近いうちに悠子さんのところへ行ってくるわ。
それから、南部君から伝言を預かっているんですって」
一枚のメモを渡された。
そこには、
『結婚式場、披露宴会場、しっかり押さえました。
後は、古代さんたちがきちんと準備できているか近いうちに確認のためお邪魔します』
「来なくていいのに・・・」
ため息混じりにポツリとつぶやいてしまう。
明日からは、パトロールをしながらの基地めぐり・・・・・・
メモを見たまま何も言わない僕に、
「明日からしばらく、会えなくなってしまうのね。
その間にいろいろと決まってしまっても文句はないですよね、進さん」
寂しさを紛らわしているのか、ちょっぴり上目遣いで見つめてくる。
「わかっていますよ、お嬢さん。
いまさら文句を言ってもしょうがないことぐらい・・・」
半分自棄になって答えてしまう・・・
「うふふふ・・・わかっているのならいいのですよ。
私も、進さんがいない間にいろいろと準備をさせていただきますので・・・」
ニコニコ笑っているユキを促して帰宅する。
今日から2週間、進さんは宇宙・・・
その間に内緒で決めることがあるの・・・
今日は悠子さんのところへ行ってドレスのデザイン画を見せる約束をした。
結婚式まであと2ヶ月もない・・・
ドレスのお直しも3週間もあれば綺麗に出来上がる予定・・・
同じく進さんのスーツも・・・
そんなことを考えながらショッピングモールの中のフラワーショップへ・・・
「こんにちは・・・
悠子さんいらっしゃいますか?」
店の奥から声が聞こえてきた。
「は〜い、ユキさん、奥へどうぞ・・・・」
言われたとおり奥の部屋へ向かった。
「いらっしゃい、ユキさん。
デザイン画、持ってきてくださいましたか?」
テーブルの上にブライダルブーケのデザイン画と資料がおいてあった。
「はい、持ってきているわよ。
デザイン変更する前のもあったほうが良かったかしら・・・」
「変更後のだけでいいですよ。ちょっと拝見しますね。
ドレスのデザインシンプルだけれどユキさんにとっても似合っていますね。
当日までお兄ちゃんには見せてあげないのですよね?」
そう聞かれたので、
「うふふ・・・そのつもりなの。
今まで見せてもらってないから見せてくれと言われているけど、
後少しなのだから我慢してもらっています・・・
それからこれが、進さんの着るスーツ。
フォーマルは嫌いだといっていたけれど、
結婚式ぐらい私のわがままを通してもらおうと思って・・・
それにね、これは当日着るだけと思っているみたいなの。
デザインを少し変えていただいてブラックフォーマルも作っていただいているの」
「まぁ、ユキさんったら・・・
お兄ちゃん知らないのでしょう・・・」
「うふふ・・・そういうこと」
二人でクスクスと笑ってしまった。
「それでユキさん、ドレスはこれ一着だけですか?
披露宴のときのお色直し用はないのかしら・・・」
「う〜ん、それがねぇ・・・
あるらしいのだけど・・・南部君、教えてくれないのよ。
私にまで内緒にすることないと思うのだけれど・・・
もし、お花を使うのなら悠子さんのところに連絡してくれるように言ってあるから・・・
そのときはお願いしますね」
「はい、わかりました。
それでは、このデザイン画、お預かりしていてよろしいですか?」
「こちらこそよろしくお願いしますね。
デザイン画は進さんのいないときに取りに来ますから、
それまで預かっていただいてかまいませんよ」
「それでは、当日ユキさんも楽しみにしていてくださいね」
悠子さんとの打ち合わせも終わり、
後は進さんが帰って来るのを待っていればいい・・・
後は何か用意することあったかしら・・・
南部君や相原君と連絡を取ったりしてあっという間の2週間が過ぎようとしている。
そろそろ進さんが帰還してくる時間になる。
2週間ぶり、今日の午後と明日一日だけお休みもらえたので、今日はゆっくりと・・・
そろそろエアポートにお迎えに行こうかな・・・
時間を気にしながら身支度をして出かける。
到着ゲート前で待っていると、人の波が切れるころ進さんが出てきた。
そっと駆け寄り
「お帰りなさい」
と一言声をかけて駐車場まで歩いていく。
途中、進さんの腕にもたれかかるようにして歩いていく・・・
久しぶりの宇宙勤務。
月、火星基地の設備の点検を兼ねた視察・・・
ほんとは参謀が行うはずの仕事なのに・・・
ふぅ・・・
ため息ばかり出てしまう・・・
視察はめんどくさいけど、宇宙に出られたからまあいいとしようか・・・
帰還後の手続きを済ませてゲートに向かう・・・
ゲートの側でユキがこっちへ向かってくるところだった。
右手を上げ合図を送るとかけ寄ってきてくれた。
ユキの
「お帰りなさい」という言葉に対して一言
「ただいま」とだけ答えて歩き出した。
途中、人気が少なくなってきたところで雪が腕を回してきた。
そのまま寄り添うように車のとめてある駐車場まで歩いていった・・・
車に乗ってから僕のいなかった2週間の出来事を簡単に説明してくれた。
「先日、悠子さんのところへ行って、ブーケを頼んできたの。
そしたらドレスは一着だけなのかって聞かれてしまったわ。
私は一着しか頼んでないけど、南部君が変なこと言っていたのよ。
当日のお楽しみは、私の分もあるんですって・・・」
「また何かたくらんでいるんだろう・・・
明日にでも連絡とって見るよ。
それから、マコから何か言ってきたかい?」
「まことさんからは何も連絡なかったけど・・・」
「ん・・・それならいいや・・・
そろそろ出来たって言ってくるころだから・・・」
「出来たって・・・何が・・・?」
と、聞いてくるので・・・
「ン・・・マリッジ・・・」
とだけ答えた。
「マコにも近いうちに連絡してみるよ。
で、今日の予定はどうなっているんだい?
久しぶりに視察なんかしてきたから疲れてしまったんだけど・・・」
「お家に帰ってゆっくりしましょう・・・
食事の用意もしてきているから大丈夫よ」
「そういうことなら急いで帰りますか・・・」
車の中で、たわいもない話をしながら家路についた。
自宅となっている官舎につくと、
「進さん、疲れているんでしょう・・・
先にシャワー済ませてくるといいわよ。
その間に、食事の準備しておくから・・・」
ユキに言われるままシャワーを浴びに行く。
疲れと汗を流して、リビングに戻ると食事の準備が出来ていた。
「あ〜、腹減った・・・
うまそうだなぁ・・・これ全部ユキが作ったの?」
「うふふ・・・簡単なもので悪いんですけど・・・
全部私が作りました。変なこというと食べさせないわよ」
ちょっと膨れて文句を言う。
「それは困る・・・ユキが作ったものは何でもうまいから・・・
それじゃぁ・・・いただきます」
「もう・・・進さんったら・・・」
もっと何か言いたそうだったユキが言葉をとめる。
「ン?何かついているか?」
「いいえ、な〜んにもついていません。
ほんと何でも美味しそうに食べてくれるから・・・・・・」
「そういう君だって、色気より食い気のほうが・・・・・・」
あわてて言葉をとめてしまった・・・
「そんなこというと、今すぐにでも実家に戻ってあげましょうか?」
つんと唇を尖らせて横を向く・・・
(まったくこのお嬢さんは、すぐ拗ねる・・・)
「それは・・・ちょっと困るかも・・・
明日の休みはユキの好きなところへ連れて行ってあげるから・・・
機嫌直して・・・くれると嬉しいんだけどねぇ・・・
それともどこにも出かけないで部屋の中にいるのかい?
俺としてはそっちのほうがいいんだけど・・・」
ちょっとおどけていってみると、
「・・・・・・お部屋に一日中って・・・」ちょっと言いよどむ。
「やっぱりお買い物にでも連れて行ってもらおうかしら?
その後ゆっくりしましょう・・・
進さんは3日もお休みあるから南部君と連絡とってもらいたいな。
南部君も詳しい打ち合わせしたいっていっていたもの・・・」
機嫌を直して食事を始めた。
「南部と打ち合わせねぇ・・・
どうせこっちの意見は聞いてくれないと思うけど、連絡とって見ますか・・・」
気は進まないけど・・・
食事を済ませ、時間はそんなに遅くないのに、体がなんとなく重い・・・
久しぶりの宇宙勤務だったので疲れが出たのだろうか・・・
欠伸をかみ殺しているところへ・・・
「進さん、疲れているんでしょう・・・
明日お出かけするのやめてもいいのよ・・・」
「ほんとにいいのかなぁ・・・
ユキがいいって言うのなら家でのんびりしたいんだけどね。
でも、今日はユキのお相手できそうもないよ・・・」
大きな欠伸をひとつ・・・
「はい、はい。明日ゆっくりお相手してもらいますから、
今日のところは先に休んでいて。
私はもう少しおきているから・・・」
「うん・・・悪いな・・・
先に休ませてもらうよ・・・お休み」
そういってユキにキスをひとつして寝室へ向かった。
そのままベットに倒れこむように眠ってしまった。
雪がベットに入ってきたのも気づかずに・・・