夏の賑わい




初夏の風薫るなか結婚式を挙げた。

結婚後地上勤務をしていた進が久しぶりに護衛艦の艦長職にもどった。

今回は南部と相原が一緒に乗艦する事になった。

乗艦前のミーティング終了後南部が話しかけてきた。

「古代さん、今度の任務が終わったらうちの別荘へ遊びに着ませんか?」

「南部の別荘へ?何でだ?」

「何でって、別に何もありませんけど・・・今の時期にしか楽しめないことがあるじゃないですか。

帰還した翌日にしましょう。

詳しい場所は後ほどメールでお知らせします」

「おい、まだ行くって言ってないぞ」

「いいじゃないですか、奥様になったユキさんに会いたいんですよ。

そうだ、相原。他のメンバーにも声をかけてくれ。

別荘に招待するからみんなで騒ごうと・・・」

「OK,その時地上にいるメンバーに連絡しておくよ」

「おい、相原」

古代が止める暇なく駆け出していってしまった。

「いいじゃないですか、1泊でも2泊でもしてかまいませんから着替え持ってきてくださいね。

ま、仲間内なんで堅苦しい格好はなしにしますから」

笑いながら言う南部に

「あたりまえだ。まったく・・・・

お前と相原が何か企むとろくな事がない・・・」

ぶつぶつという古代の後ろで南部がにやりと笑っていたのに気づく古代ではない。

「じゃ、古代さん。今度の航海よろしくお願いします」

「ああ、こっちこそよろしく頼むよ」




帰宅した古代がユキに南部から別荘に誘われた事を伝えると

「南部さんの別荘?ほんとにお邪魔してしまっていいの?」

「ああ、いつものメンバーも誘うって行っていたから大丈夫なんじゃないか?

今回の航海から帰ってきた翌日から1泊でって言われたけど、ユキのほうは大丈夫?」

「ええ、大丈夫よ。進さんの帰還にあわせてお休みをもらうつもりだから。

でも・・・」

「でも?」

「本当にいつもの人たちだけかしら?なんだか不安になるのよねぇ・・・・

南部さんの企画で集まるときって・・・」

「そういわれると俺も不安になってきた・・・

航海の間に変な企画を立てないようによく言っておかないといけないな」

眉間にしわを寄せながら言う古代に

「でも、あまり強く言ってはダメよ。ダメって言われると余計に燃え上がるから、南部さんと相原さん」

「ちょっと早い夏休みのつもりで遊びに行けばいいか・・・・

考えすぎて腹が減っているのも忘れていたよ」

「うふふ、今したくするから、着替えてきて」

ユキに言われ古代は着替え向かう。





食後に入れた紅茶を飲みながらユキが、

今度の航海から帰ってきたら、ちょっと早い夏休みもらいましょうよ?

南部さんの別荘へ行くついでにちょっと遠出するのもいいでしょ?」

「そうだな・・・ちょっと遠出してみるか・・・

どこかいきたいところがあるなら連れて行くよ」

「ほんと、じゃ、後で南部さんの別荘の場所聞いてから決めるわ」

はしゃいでいるユキに

「休暇の申請、今からでも間に合うのか?」

「大丈夫よ。だってまだ1ヶ月あるでしょ?それに、夏の休暇は早く取ったほうが優先されるの。

でも、相原さんが行くということは晶子さんも来るわね。なんだか楽しみだわ」

「なんだか嫌な予感がしてきた・・・」





数日後、古代たちの乗った護衛艦は地球を離れた。

古代と相原を見送ったユキと晶子は急いで仕事に戻る。

1ヵ月後の休暇を確実に取るために・・・






1ヵ月後、無事地球へ帰還してきた古代たちは手続きを済ませた。

ゲートの出口へ向かう途中で南部が

「古代さん、明日4時ごろまでに来てくださいね。

別荘の住所と電話番号は後ほど送りますので」

「そんなにゆっくりでいいのか?」

「いいですよ、早く着て手伝っていただいても・・・

でも、愛しい奥様に1ヶ月ぶりに会うんですよ。

明日の朝早起きできるわけないでしょう?」

南部の一言に真っ赤になった古代が

「ば、ばかやろう!!こんなところでなんてこというんだ!」

「ほらすぐ向きになる、だからからかわれるんですよ、なぁ相原」

「ええ、また一つからかうネタ拾いましたね、南部」

ニヤニヤと笑っている二人にひと睨みする。

「睨まれても怖くありませんよ。明日時間通りにきてくださいね」

声をかけた南部を無視するように先に歩きはじめた。

先に歩く古代の姿を見ながら相原が

「で、南部、明日の守備は?」

「もちろんバッチリOKですよ。明日古代さんたちどんな顔をするか楽しみだな」

「まったく、こういうことには張り切るんだから・・・・」

「まあま、楽しく過ごせればいいのではありませんかね?相原君?」

「やっぱり行くのよそうかな・・・・」

「何を言っているのかな?君と晶子さんが来てくれないと困る事があるんですけど?」

「うー・・・・」

「諦めて手伝っていただきますからね。記録係よろしく」

「おい、南部・・・・」

小さなため息を一つこぼす相原だった。





指定された時間に南部の別荘へ着いた古代とユキは広い駐車場へ車を止めるとそこには見慣れた車が数台止まっているのみ気がついた。

車から降りたところへ相原が声をかける。

「古代さんユキさん、お疲れさまでした。

もう少しで準備ができますから部屋のほうで待っていたください」

相原に案内されて部屋へ向かう。

途中、準備に借り出されて太田や、島とすれ違う。

島と太田の顔を見た古代が

「相原、何かたくらんでいないか?」

少し声ををとして相原に尋ねると

「いえ、別に何もたくらんではいませんよ、僕は・・・」

「ほぉ・・・という事は南部が何か考えているということか・・・」

古代に睨みつけられた相原は、

「やだなぁ・・・何も考えていませんよ。

もう少しで準備ができますのでこの部屋で休んでいてください。

決して外へ出ようなんて気を起こさないでくださいね」

相原の一言に不安を抱く古代だった。




数分後、相原と入れ替わりに南部が部屋へ入ってきた。

「古代さん。申し訳ない」

いきなり謝る南部に

「どうしたんだ?何か不備でも?」

「ええ、ほんとは仲間だけで楽しく過ごすはずだったのですが、どこでかぎつけてきたんだか・・・

うちの親父たちも隣の別荘に来ているそうなんです。

一緒にパーティーをすることになってしまったので・・・・

申し訳ないんですけどクローゼットに入っている服を着てくれませんか?」

南部に言われクローゼットを開けるとタキシードとドレス・・・・

「おい、これはどういう事だ?」

「どういうって・・・別にたいしたことではありませんよ。

サイズは知っていますからお二人に似合う服を用意したんですよ。

もちろん、他のメンバーのものも用意してあります。

諦めてきてくださいね。ユキさんも髪を整えるのなら言ってくださいね、お手伝いさせていただきますので」

「おい、この知能犯め・・・」

ぼそりという古代に

「ええ、楽しい企画はみんなのためですから。

それじゃ、パーティーの開始時間が5時半からに成りますからその頃下へ来てくださいね。

お二人が驚く事もありますから」

そういって出て行ってしまった南部を見送り

「ふぅ・・・・やっぱり来なければよかったかなぁ・・・」

「そんなこといわないの。せっかく南部さんが用意してくださったのだから・・・・

それにお洋服には罪はないわよ。

でも、私たちが驚く事って?」

「それも会場へ行けばわかることなんだろう?

後で何倍にでもして仕返ししてやるさ」

ため息混じりに言う・・・




時間になり下へ降りていくと準備も整っていたようだ。

後ろから

「やっぱり時間通りだよなぁ・・・」

聞こえた声に振り返ると島と連れの女性がたっていた。

その女性を見たユキが

「真樹、あなたいつから島さんと?」

島の横に立っている女性へ向かって質問をする。

「うふふ、あのね、ユキに紹介してもらったでしょう?

あの後偶然島さんとショッピングモールであったの。

食事時だったから一緒に食事して、意気投合しちゃったの」

さらりと言う友人を見つめる。

「で、ココに彼女を連れてきたってことは?島」

「ああ、結婚する事になったんだ。

色々と忙しいと思うけど出席してくれるだろう?」

「当たり前だ、お前の悪行を洗いざらいしゃべってやる。おめでとう島」

「ありがとう、古代」

「これで結婚が決まっていないのは、南部と太田だけか?」

古代の袖を引っ張りユキが

「あら、まだ真田さんがいらっしゃるでしょ?」

「真田さんは、俺たちと一緒にしてはまずいだろ?

それに今日は真田さん来ていないはずだよ」

「え?なぜ?」

「真田さん、新造艦のテスト航海へ引っ張り出されてしまったらしいぞ、古代」

「ああ、昨日報告書出しに行ったとき直接聞いた。

なんでも急に決まったことだって・・・確か製造を依頼した会社の社長も一緒に乗っていくといっていたけど・・・・

おい、南部」

古代に大声で呼ばれた南部は相原の後ろへあわてて隠れる。

その姿を見た島が

「今回のの造船工場は南部重工だったはずだよな」

相原の後ろへ隠れた南部の元へ古代が近づき

「南部ぅ〜、どういうことか説明していただこうか?

俺たちにこんなかっこうさせて・・・」

相原の後ろから顔を出した南部は

「いいじゃないですか、ココへ誘った人たちにも同じような格好をしていただいたんだし・・・

それに、皆さんご婦人を伴ってきているんですよ。

そんな些細な事で怒る事ではないでしょう?古代さん」

「わっはっはっは、古代お前の負けだよ。

確かに南部から連絡来たとき女性もお連れくださいという事だったよ。

だから俺も真樹さんを誘ってきたし、南部や太田だってなぁ・・・」

「うっ・・・島さん今それを言っちゃダメですってば・・・・

古代さんたちを驚かそうと思っていたのに・・・

ま、兎に角中へ入ってください、皆さんを紹介しますからといっても知らない人ばかりではないんですけどね」

別荘のリビングに入ると、中は立食式の会場になっていた。

中に入ると、テーブルのそばに太田と彼女。

少しはなれたところに相原と晶子さん。

「南部、お前の相手は?」

「え、僕の相手ですか?古代さんの後ろに立っていますよ」

古代が振り向くと

「裕子先生」

「お久しぶりね、古代さん、ユキさん」

「裕子先生、なぜ、こいつと・・・」

南部を指差しながら言うと

「ひどいなぁ・・・・古代さんの知らないところでお付き合いしていたんですよ。

古代さんたちの結婚式も無事終わったのでやっと両親に紹介したんですよ。

太田の彼女もあとで紹介していただくつもりですから・・・

そろそろ始めますよ」




それぞれの手にグラスが渡ったのを見て南部が

「では、元ヤマトのクルー諸君、夏のひと時を楽しもうではないですか。

メインクルーはそれぞれ連れの方のお相手をしてあげてくださいね。

一人身には目の毒かもしれませんが、こういうときに二人の馴れ初めなどを聞いて後日相原もしくは南部まで報告をお願いしますね。

もちろん報告していただいた方には南部家ご用達のワインを1本・・・

というのは冗談ですが、兎に角楽しい時間をすごしてください。

今日メインのゲストとして古代夫妻にご挨拶を・・・・」

南部からマイクを渡された古代は、

「まったく・・・・こういうことには抜け目なく計画立てるやつが数名いるようです。

メインクルーが連れてきている女性は将来を誓った方たちだそうですので質問などはそちらへお願いします。

楽しく、羽目をはずさない程度に・・・・」

マイクを南部に返しユキとともに輪の中へ入る。

「では、乾杯と行きますか?乾杯の音頭は島さんお願いしますね」

「おい、南部。俺まで巻き込むな・・・

古代も言っていたようには目をはずさないように楽しく過ごそう。

では、乾杯」

「「乾杯」」




しばらくすると古代たちの周りにメインクルーが集まり始める。

「エスコート慣れてきたみたいだな」と島。

「ソレはもう、大事な奥様ですからねぇ・・・」と南部。

「古代さんユキさん、立会人お願いしますよ」と相原。

「今日の料理、うまいなぁ・・・」と太田。

「前たちいい加減にしろ!!」と古代の怒鳴り声。

そんな男たちを後ろから静か見つめている女性たち。



いつしか夜も更けにぎやかだった会場が静かになった頃一枚の写真がテーブルの上におかれていた。


写真の裏には、いつまでも、仲のよいご夫婦でいたください。

僕らの先輩へ
(島、南部、太田、相原、他元ヤマトクルー)



END



えゆうさんからいただいたイラストでお話を考えてみました。
メインクルーの彼女たちとの出会いはいずれ書きたいと思っています。

えゆうさん、イラストをありがとうございました。


2005.7.11 up

(拝啓:Little Rascal)