Countdown
Chapter 1 −10日前−
後10日でこの仕事も終わる。
2ヶ月前、出航する僕をユキと子供たちが一緒に見送ってくれた。
まだまだ手のかかる時期に宇宙勤務に出るつもりはなかったのに・・・
訓練学校の校長からの要請では断ることが出来なかった。
そう、今僕は訓練学校の特別教官になっているため。
今回は訓練航海をかねた訓練生の実地訓練。
今のところ大きな事故もなく無事訓練を行っている。
ただ、地球が近づくにつれて訓練生たちが浮き足立ってきているのがちょっと気になる。
そんなことを考えていたとき、今回一緒に乗り込んでいる島が声をかけてきた。
「古代、今日の訓練はすべて終わったぞ」
「ん、そうか・・・」
はっきりしない返事に、
「なに考えていたんだ・・・」
「別にたいしたことではないんだが・・・
訓練生たちが浮き足立っているような気がして・・・」
「あはは・・・そんなこと心配していたのか?
確かに後10日で地球に帰れると思っているからだろう・・・」
「心配しすぎるって言いたいんだろう?
でもな、こっちは気を抜くわけにはいかんだろう?」
「まぁ、何事も起こらないように気をつけるしかないか・・・・」
そんな話をしていたとき、
「古代教官、島教官。
今日の訓練報告です」
二人の訓練生が、報告書をもって来た。
「今日の訓練は・・・」
パラパラと報告書をめくる。
最後のページできになるところがあったので
「塚本、怪我人がいるのか?」
僕の目の前に立っていた塚本に尋ねると
「はい、怪我人といっても切り傷と、打撲程度ですけど・・・」
「訓練中の怪我ではないんだな?」
「はい、訓練が終わってから、片付けのときに怪我をしたようです」
「まったく・・・最後まで気を抜くなって言って置け」
「はいわかりました。伝えておきます」
敬礼をした部屋から出て行く。
「怪我人がいるのか?」
後ろから島がたずねてきたので
「ああ、たいしたことはないようだけど・・・
2,3日様子を見るよ」
「そうだな。あまりこっちが神経質になってもしょうがないからな」
「そういうことだ。
訓練は予定通りでいいな?」
「ああ、任せる。俺は部屋に戻るよ。
今日の定時報告任せたからな」
「了解。お前も定時連絡きちんと取れよ」
「ああ、お前もな」
島と別れ今日最後の仕事をしに通信室へ。
自室に戻り明日の朝まで何事もなければこのまま休むことが出来る。
就寝前にメールのチェックをすると
着信ありの表示。
一日おきの報告会。
今日はユキからだった。
『進さん
お仕事順調ですか?
美希と美優もご機嫌でしたよ。
明日、子供たちと保育園に遊びに行ってきます。
子供たちが慣れるまでしばらく通うつもりでいます。
それから、美希と美優、二人で何かお話しているみたいなの。
時々声を上げているのよ。
今度ビデオに録画しておくわね。
10日後、無事帰ってきてくださいね。
ユキ』
そろそろユキも職場復帰の準備に入るといっていたから・・・
子供たちも保育園に預けることになるんだよなぁ・・・
出来るだけ協力するよ。