01.記憶



記憶・・・
楽しかった記憶
淋しかった記憶
悲しかった記憶
心の底にある記憶は・・・

楽しい事を思い出そうとする時
どうしても悲しい記憶がよみがえってきてしまう
大好きな兄に会うために出かけた僕
兄と、他愛のない会話に話が弾み
帰る時間が大幅に遅れてしまったこと
僕が後れていることを知らない両親が
僕のことを迎えに出たらしいバス停

外宇宙からの攻撃で
地球上で安全に暮らせなくなったしまったぼくたちは
地下へと住む場所を変えていた
その地下へ引越しをするとこを兄に報告がてら遊びに行った帰りだった
大きな振動で乗っていた電車が転覆
僕の帰るべき方向の空が赤々と燃えているのを見たとき
無意識に両親の元へと歩き始めていた

瓦礫の中を何時間もかけてたどり着いた場所は
見る影もない僕の住む町だった跡・・・
友達も親戚もみんないなくなったしまったと膝を突いた場所が
朝、両親と別れたバス停のそばに立っていた大きな木の根元だった

小さな切れ端が根元に引っかかっているのを見たとき
その布が母の洋服の切れ端だと
朝、笑顔で見送ってくれた母のものだという事に気がついた
小さな布を握り締め声を限りに泣き続けた
手の中にあったはずの小さな布はいつの間にかどこかへ行ってしまったのか
兄に聞いても応えてはくれなかった。

その兄の戦死の知らせを聞いた僕は
悲しみと怒りをある人へぶつけてしまった
兄の荷物を整理していた時
見慣れない箱が出てきた
その箱をそっと手に取りふたを開けると
中にはあの日僕が握り締めていた布の切れ端が・・・

大切な宝物をしまうように
綺麗にたたまれていた布
この布を兄はどのような気持ちで見ていたのか
頑なに心を閉ざしていた僕にわかるはず見ないけど・・・

悲しい記憶を心の中にしまいこんでからの僕自身は
感情を表に出す事が苦手な子供になってしまっていたらしい
遥か遠くの星で会えないと思っていた兄との再会が
ボクの凍ってしまった心を溶かしてくれてのかもしれない
気の置けない仲間
僕の想いに応えてくれた君

悲しい記憶は消す事は出来ないかもしれないけど
これからの楽しい記憶や嬉しい記憶を積み重ねていけば
悲しいつらい記憶もいつかは癒されるかもしれない


2006.4.25ブログへ投稿
2006.4.26加筆、修正

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