春の章 出会い 4
12.
サーシャが学院に来て2週間を過ぎようとしていた頃・・・・家族の面会日がきた。
サーシャの元にも一通のメールが届いていた。
「澪のところは誰が来てくれるの?お父様??」
サーシャの肩越しに世志子が覗き込んだ。
「ううん。お父様は出張なんだって・・・・代わりにおじさまが来てくれるって・・・・」
「叔父さん?確か、澪のお父様ってすごく若かったわよねぇ・・・・おじさまもコリャ楽しみだわ♪」
「おじさまはもう売約済みよ?」
ちょっとむっとして反論するサーシャの目線を・・・・
「いいじゃん・・・・見学するのは年配の人よりも素敵な方のほうが目の保養というものよ♪」
としれっと世志子はかわした。
「・・・・そういう世志子んとこはどう?誰が見えるの?」
「私?私ンとこは珍しく兄貴が来てくれるみたい・・・・宇宙勤務しているから滅多に地球にいないんだけど・・・・妹がいることを忘れてはいなかったみたいね」
「へぇ〜・・・私のおじさまも宇宙勤務なのよ。艦隊に配属されているわ。」
「あ、私も処もよ。案外知り合いだったりしてね〜・・・・ケイトのとこは今回もお兄さんなんでしょ?」
いきなり話を振られたケイトは読んでいた本から目を離し静かに微笑んだ。
「お義母さんはもう年だからここまでなかなか来られないから・・・・私のお義兄さんは普段は地球勤務だし・・・・」
「へぇ・・・・じゃ、みんな家族の誰かが防衛軍勤務なのね?」
「ここは多いのよ。そういう関係者・・・・ほら・・・・高等部3年の学生会長・・・あの方なんか長官のお孫さんだって言うし・・・」
その時3人の頭上で来客を知らせるメッセージが流れた。
「そろそろ面会時間みたいね」
「じゃ、エントランスへ行ってみようか・・・・お出迎えって言うのもすてきじゃない?」
3人は揃って部屋を出て・・・エントランスへと向かった・・・。
エントランスでは既に何組かのグループが久しぶりの再会を喜び合っていた。
その輪をくぐり抜け、表へと続くゲートのところに立ったとき・・・・
一台の真っ赤なスポーツタイプの車が駐車スペースに入ったのが見て取れた・・・。それを見つけたサーシャは・・・
「おじさま!!!」
と車へと駆け寄ろうとして、はたと立ち止まった・・・・。その車の助手席から女性が降り立ったのだ・・・・。そしてサーシャの姿を目に留め、ニッコリと笑った。
サーシャはその女性の顔をジッと穴が開くかと思われるほど見つめた。その目が大きく見開いてゆく・・・
「あ・・・あ・・・ユキママ・・・・ユキママでしょ???」
サーシャは思いっきりその女性にタックル!!飛びつかれたほうはその勢いを受け止めるのが精一杯だった。
「ユキママ〜〜〜〜〜〜会いたかったァ〜〜〜お父様の家にいる間ちっとも会いに来てくださらないんだもん」
ユキにしがみついて泣きじゃくるサーシャの姿に・・・・運転席から降りてきた男・・・・サーシャの叔父、古代 進のほうが驚いた。
「おいおい・・・・ユキ・・・・どういうことなんだ?」
「さ・・・・さぁ?」
抱きつかれ、胸でオイオイ泣かれたまま、ユキはサーシャを抱きしめ途方にくれた。
「なんだ?澪・・・もう張り付いてしまっているのか?」
もう一台車が止まり中から出てきた男が笑いながら語った
「さ・・・真田さん・・・?どういう・・・・??」
「ハッハッハ・・・・実はな・・・・サーシャがイカルスで一番恋しがったのはユキなんだ・・・・」
「はい??」
「あら?お義父さまも来て下さったの?」
いままでユキにしがみついて泣いていたサーシャは真田の顔を見て満面の笑みを浮かべた。
「ほら・・・・赤ん坊の頃サーシャはユキに一番なついていただろう?イカルスについてもあんまり懐かしがって泣くからユキのホログラフを作ってやったんだ・・・・そして、この子には『サーシャをかわいがってくれたお母さんみたいな存在だ』といって教えてやったんだ・・・・小さくても恋しかった人のことは覚えていたものだな・・・・サーシャは結局最後まで『ユキママ』という言葉は忘れなかったぞ」
「ユキママ〜〜〜♪」
「そうだったの?ごめんなさいね、サーシャちゃん・・・・私もずっと出張続きで・・・昨夜帰ってきたところだったの・・・・・寂しい思いをさせてごめんなさいね」
ユキはそういいながらサーシャの頭を撫でながら静かに優しく小さな声で囁いた。
小さな子供のようにユキの胸にしがみついて甘えるサーシャの姿に古代はため息を付くしかなかった
「こっだいさん・・・なんでこんなとこにいるんですか?」
「なんか、女の子にユキさんを取られちゃっているようですね?顔がやきもち焼いているって顔になっていますよ」
突然後ろからいきなり声が降ってきて、古代は飛び上がらんばかりに驚いた。
「南部!相原?!なんでお前達がここにいるんだよ?!」
「僕達は自分達の妹達に会いに来たんです・・・何も変なことはないでしょ?」
「そういう古代さんこそ・・・ここは女子校ですよ・・・・」
「さては・・・・」
「何を考えているんだ!!俺はその・・・真田さんと澪に・・・会いに来ただけだ!!」
・・・・・正門脇の駐車スペースで鉢合わせしたらしい・・・・ご丁寧に古代の車の横に見覚えのある車がもう一台横付けされていた。
楽しそうにじゃれ付く世志子の兄、康夫とケイトの義兄義一・・・・そしてからかわれふてくされたような顔をした(澪)サーシャの叔父・・・・進
「・・・・・・世志子とケイトのお兄さんと進叔父様知り合いだったの?!ううん・・・ユキさんも・・・真田のお義父様も?!」
いままでユキにじゃれついていたサーシャは目を丸くして叫んでしまった。
世志子とケイトも驚きつつ・・・・
「こっちが言いたいわ・・・・澪・・・・そういえばあなたの名字って『古代』だったわね・・・」
と呟いていた。
「うん・・・・じゃあ・・・・」
「ヤマトの関係者同士だったようね?お互いに・・・・ま、いいわ・・・・改めてよろしく。お互い接点が増えてよかったじゃない」
といって二人はサーシャのほうに手を差し出した。
その二つの手を・・・・サーシャはニッコリと笑って両手で握り返した。
サーシャの長い金色の髪を晩春の爽やかな風が軽やかになびかせていった・・・・
おまけ〜
「相原!おまえ妹がいるなんていっていたことなかったじゃないか!」
「あれ?あった事があるはずですよ。ほら、ヤマトが初めてイスカンダルから帰ってきたときに凱旋記念式典で僕の母があのコを連れてきていたじゃないですか。」
「そんな昔のこと忘れたよ」
「でも、どういういきさつであなたの家に引き取られたの?ケイトちゃん・・・・日本人とは違うわよね?」
「あの子はハーフですよ。僕の母のイトコの子供・・・・ほら、ガミラスの遊星爆弾の攻撃を受けていた頃・・・・アメリカは早くに攻撃を受けていたでしょう?その攻撃で両親を失ったあの子は、アメリカ国内に身内が見つからなくって、父方の親戚を頼って日本に送られてきたんです。でも、その頃日本でも彼女の身内といえるのは・・・・遠い身内の僕のうちだけで・・・・
父が亡くなったすぐの頃に引き取ったらしいんです。彼女のおかげで気が弱っていた母も彼女を守らなくてはという気になってなんとかあの時局を乗り切ってくれたんですよ。」
「随分苦労したんだな・・・・彼女も・・・・」
「その影響なのかは知りませんが・・・随分人見知りをしますけどね。澪ちゃんにはそうでもなかったな・・・・」
「で・・・・その澪ちゃんなんですが・・・・」
南部が古代にズイッと詰め寄った
「守さんの子供というのはどういうことなんですか?」
「は??あ・・・・えっとな・・・・」
「守さんにはあんな大きなお嬢さんがいたんですか?地球に・・・・ということは彼女はサーシャちゃんの腹違いのお姉さんと言うことに・・・・・・」
「ち・・・・違う!!断じて違うぞ!!兄貴の名誉のためにも言っておくが、いくらあの兄貴でもそんなヤツではないぞ!」
「じゃなんですか?」
「真田さぁ〜〜〜〜ん」
「ま、こいつらだって当事者といえなくはないんだし・・・・言っておいてもいいんじゃないのか?古代」
そこで・・・・・かくかくしかじか・・・・・
澪=サーシャの秘密が明かされることになりましたとさ★
でもこのことは・・・・秘密、ひ・み・つ♪
「・・・・・だからって俺達にまで隠しておくことはないでしょう?」
「よし!!今夜は古代さんのおごりで目一杯飲むぞぉ〜〜〜〜!!」
「なんでそういうことになる!!!ユキ!!こら!ユキ!!笑ってないで助けてくれ!!!」
古代の抵抗も空しく・・・・彼は仲間達に拉致されて夜の街へと消えていった。
「いいのか?ユキ」
「いいんです♪たまには羽根を伸ばすこともいいんですから・・・・」
「あれが羽根を伸ばしている男の姿だったかね?」
真田が“気の毒に”という顔をして苦笑した・・・・・。
END