野辺送り〜宇宙戦艦ヤマト・新たなる旅立ちより〜
その瞬間・・・・・一陣の真っ赤な風(?)が脇をすり抜けた・・・・と島は思った。
次の瞬間
「きゃぁぁぁぁぁ〜〜〜〜/////」
・・・・・・・周りの喧騒を引き裂くような声が辺りに響き渡り、ピンクの花びらが大きく広がった・・・・・
と思ったら・・・・
・・・・・・・過去に数回(本人の意に反して(?))・・・・
目にしてしまった禁断の魅惑の白いものが島の目の前に現れた・・・・・・
が、それはすぐに隠された。
「もう〜〜〜〜」
そこに残っているのは・・・・・顔を真っ赤にした・・・・
親友の恋人。かつての初恋の君・・・・
「アナライザーっ!!今日という今日はもう許さないんだからぁ〜〜〜〜っ!!お待ちなさい!!」
そういうと彼女は真っ赤なロボットを追いかけ始めた。
あ〜いうかわいい仕草は出会った頃から変わんないなァ〜・・・・
島はアナライザーを追い掛け回す彼女の背中を見つめながら思わず吹き出した。
「マテマセン、ユキサン・・・・ピラッ♪」
「きゃっ!!」
追いかけられながらも・・・・そこは敵も然るもの。
真っ赤なボディのアナライザーはその伸縮自在な腕を巧みに伸ばし、再び彼女の花のように広がるスカートを思いっきりぴらっ♪
「おっ♪」
再び魅惑の白が・・・・・
「もう〜〜〜〜〜〜いやぁ〜〜〜〜〜アナライザー!」
これでもかと広がるスカートの裾を手で押さえながらユキは泣きそうになっていた。
それでも負けん気の強い彼女は真っ赤な顔をしながらアナライザーのボディをポカポカ叩いている。
思わず笑わずにはいられなかった・・・・というより笑ってしまうしかなかった。
隣を見ると、親友も笑っていた。
こういう馬鹿馬鹿しさが今日の酒盛りにはよく似合う・・・・・
今日は・・・今日の酒盛りは・・・・・
この前の戦いで散っていった仲間達への野辺送り。
どいつもこいつも勇敢で・・・・男らしく・・・・そしてバカばかりだった。
どいつもこいつも・・・・・自分のことより他人のために闘い・・・
そして満足して散っていった・・・・。
みんないいヤツばかりだった・・・・
みんな賑やかな酒が好きな奴らばかりだった・・・・
だから・・・・今日は思いっきり飲もう。
だから・・・・今日は思いっきり笑い飛ばそう。
思いっきりこれでもかと・・・・・・
それこそがこの星を俺達に託して散っていったあいつらに対する最高のはなむけだ・・・・・
島はそう思った・・・・・。
「古代君っ!!何を笑ってるのよぉ〜〜★」
アナライザーにいくら抗議しても無駄だとわかっているユキは矛先をその婚約者にぶつけてきた。
「え?!」
今まで島と大笑いしていた古代の笑顔が引きつった。
「あなたの婚約者の私がこんな目にあってるのに・・・・あなたは思いっきり笑うのねっ!!」
あ〜〜〜〜〜〜完全なる八つ当たりだ・・・・。
「普通、恋人がさらし者になっちゃったのなら笑うどころか怒るのがとぉぜんでしょっ!!なのにあなたときたら〜〜」
おいおい、ユキ・・・・そいつは無理な話だ。
お前の古代(あいつ)は・・・・普通じゃないんだから・・・・
こいつに普通の感覚を求めるのはプテラノドンに逆立ちをさせるより難しいことかもしれないぞ?
思わず、声に出したいその答えを島は笑いを堪えながら封じ込めた。
「・・・・・人がひどい目にあってるって言うのに何を笑ってやがる・・・・・」
地の底から響いてくるようなどすの利いた声が静かに彼の頭上に落ちてきたからだ。
「てめぇ・・・・モロ見ただろう」
「なにをだ?」
「とぼけるな!!あの角度からすると・・・・・・絶対に俺よりお前の方が〜」
あぁ〜あ・・・・今度は古代が俺に八つ当たりかよ・・・・
ひどいとばっちりだな。
「俺が何を見たって?あ?言ってみろ?古代」
「な・・・・なにをって・・・・・」
古代の顔が真っ赤になる
「古代君!!何を島くんに八つ当たりしてるのよ!だいたいあなたもみんなといっしょになって笑ったのが一番悪いんでしょっ?!」
「わ・・・・ユキたんま!!落ち着けって!!」
「もう〜〜〜許さない!!」
夫婦喧嘩は犬も食わないっていうけどな・・・・・古代のヤツ・・・完全にユキの尻に敷かれているよなぁ〜
っとに・・・今からあんなんで結婚なんて出来るのか?
あ・・・そうか・・・延期したんだったな・・・・・
ったく・・・・本当に・・・・・互いが互いを思いあって離れられないっていうのに・・・・こいつらと来たら・・・・
死んだ連中も本当にヤキモキしてることだろうよ・・・・。
「大体、島くんに何を言ってるのよ!古代君!!」
「え?いや・・・あいつの方が君のパン・・・・」
「きゃぁぁぁ!!!バカバカバカ!!!」
真っ赤になりながらユキは古代の胸を拳で叩いた。
「放っておいていいんですか?島さん」
少し心配そうに相原が島に囁いた。
「ユキさん、アルコール入ってるから・・・・だいじょうぶかな?」
「入ってるって言ったってたいした量じゃないだろ?放っておけよ。いつもの痴話げんかだ」
島は酒の入ったコップを傾けながらシレっと応えた。
「放っておけばいいさ・・・・あれがなけりゃヤマトじゃないし・・・・」
「そうですね」
「ま、確かにアレはヤマトの名物だわな・・・」
今まで離れてチビチビ飲んでいた佐渡も笑いながら寄ってきた。
というよりは・・・・いつの間にか今日の参加者18名・・・全員がその騒ぎを楽しんでいた。
「あの癖は当分直らんなァ〜」
「・・・・ロボットの癖は技術者が手を下さないことには直りませんよ」
「なんだ?南部。その目は」
「いえ・・・・真田さん・・・・アナライザーの回路を見直す気は全然ないでしょ?」
「人聞きの悪いことを言うヤツだな」
なにやらたくらんでいそうな南部のいつもの笑顔を真田は笑いながら真正面から平然と受け止めた。
「俺はヤマトの名物に手を下すつもりはないしな。それに・・・そんなことをしたらそれこそあの連中に『いらないことをした』
と化けてでられそうだしね」
真田がそう言って指をさした先には、かつて彼らを導いた・・・・
師とも仰ぐ人と共に安らぐ仲間達の姿が彼らを見守るかのように並んでいる。
「そんなの・・・へとも思ってないくせに」
太田のボソっとしたつぶやきに辺りの連中は「違いない」と大笑い。
「お前ら〜人がひどい目にあってるってのに何笑ってるんだよ」
ユキの怒りが落ち着いたのか・・・・古代がようやく戻ってきた。
「佐渡先生も真田さんもひどいですよォ〜。他の連中といっしょになっておもしろがって見てるなんて・・・・」
「あったりまえじゃ!いらん口出ししてユキに怒られたくはないからのぉ〜」
「ま、ひどいわ!先生まで!!」
ぷぅ〜と膨れたユキにまたまたみんな大笑い。
「しかし・・・とんだ野辺送りになりましたね」
「ん?破天荒なところがヤマト戦士の野辺送りっぽくていいんじゃないのか?南部」
「違いありませんね」
南部は空を仰ぐように笑った
「いかにもあの連中らしい野辺送りですよね・・・全く」
「本当だな」
島も静かに空を仰いだ。
真っ暗な漆黒の空には地上を見守るかのように星が瞬いていた。