パーティーは賑やかに
防衛軍のカフェテリアの隅でこそこそ相談をしている二人。
ヤマトクルーの南部康夫と相原義一である。
この二人がなにやら計画を立てているようで・・・・・・
ことの起こりは、夏の終わりの花火大会の夜のこと。
ヤマト艦長代理と生活班長、
早く言えば古代進と森ユキの旅行先へ押しかけて
艦長代理からきつ〜いお小言を頂いたお礼を相談しているところらしい。
この二人が何かを計画するのを楽しみにしている仲間や先輩方も多くいるようである。
さて何をたくらんでいることやら・・・・・・
ちょっと覗いてみたいと・・・・・・
「これが、古代さんのスケジュールで、こっちが僕達のスケジュール。
休暇が同じ時期に重なるのが、ここと、ここと・・・」
指をさして確認をしていると
「相原こっちも重なるぞ。」
「南部さん、そこは古代参謀が出張中で駄目なんですよ。
それに、次の日も休みのほうがいいと思うんですけど・・・
そうするとここだけですね。古代さんたちには内緒にしておくんでしょう?」
「今から言っておいたら逃げられちまうよ。
ほかのメンバーには相原メールで知らせておいてくれるか?」
「任せてください。会場のほうはお願いしますよ。」
南部、相原会談はこうして進んでいる様子・・・
当日何かをやらかしてくれそうです。
悪巧み前日。
夕飯も済みのんびりと食後のティータイムを楽しんでいた二人。
そこに電話のベルが鳴った。
「はい、古代です」とユキが出た。
「あら、相原君、何か急用?」
「急用と言えば急用なんですが、古代さんはいますか?」
「いるわよ、変わりましょうね。古代君、相原君よ。何か用事があるんですって」
休みの前にとぶつぶつ言いながら代わると
「古代さん、明日の夕方あいています?
あいていればちょっと付き合ってもらいたい所があるんですけど・・・
勿論、ユキさんも一緒に。」
「明日の午後の予定といっても特別何もないよな、ユキ?」
「ええ、買い物に付き合ってもらうつもりだったけど明日でなくてもいいから・・・」
と、ユキの怖い返事を聞いて苦笑いをしてしまった。
「特別用事はないが、どこへ付き合うんだ?また変なことさせるんじゃないだろうな?」
「いえ、変なことなんてしませんよ。後が怖いですから・・・
明日、4時ごろお迎えにあがります。」
「言いたいことだけ言って勝手にきりやがった・・・」
ため息混じりに呟いてしまった僕のほうを見てクスクス笑いながら尋ねてくる。
「相原君の用事何なの?」と効いてくるユキに、
「さっぱりわからん。兎に角明日の4時に迎えに来るそうだ。
何故か嫌な予感がするんだよな。相原だけの用事ではないようなきがする。」
確かに、このところこそこそと人の顔を見ては話しをしているヤマトのメンバー達・・・
「兄貴も変なこと言っていたし・・・明日出かけるのやめたくなってきた。」
「そんなこと言っていると本当になっちゃうわよ。それよりお茶のおかわりは?」
聞いてきたユキをそっと抱きしめながら
「お茶よりこっちのほうがいいな」言うより早く口付けをした。
翌日の午後4時時間厳守の迎えが来た。
「おい、相原どこまで連れて行くんだ?」と聞いたが、
「すぐそこですよ。それよりこれを着けていただけませんか?」
さし出されたものを見て驚いてしまった。
「これをって・・・アイマスクじゃないか?それも俺に分だけって言うのはどういうことだ。相原!」
「そんなに怒らなくてもいいじゃないですか。
古代さんに行き先がばれるのが困るだけですからね。ユキさん」
「ユキ、君はどこに行くか知っていたのか?」
「ええ、だ・か・ら、古代君、おとなしくアイマスク着けてね。」
文句を言う暇もなくしっかりと目隠しをされてしまった。
しばらくそのままおとなしくしていると
「古代君、着いたけどもうしばらくそのままでいてね。」
ユキが優しく手を引いてくれるのがわっかた。
「もうしばらくって、どこまでつれてくんだい?」
僕の問いかけに答えたのは・・・
「進、来たな。こっちだ、早く入れ。ユキは向こうで着替えてきてくれ」
「兄貴、どうしているんだよ」アイマスクを取りながら睨み返すと
「どうしてって、こんな楽しいことに参加しないわけには行かないだろう?」
楽しそうに笑っている。
「ユキ?」と振り返ってみると彼女もちょっと固まっている。
「どうした、ユキも知っていたんだろう?」
「守さんまで来ることは知らなかったの。それに、着替えるって???」
兄貴達の姿を見て驚いたなんてものじゃなかった。
このまま逃げてしまおうと一歩後へ下がろうとしたときに
両脇から手が伸びてきて逃げることが出来なくなった。
「な、南部に相原、どういう魂胆だ。いい加減にしろよ」
と怒鳴ったところでどうにもならない。
「ユキも更衣室に用意してある衣装に着替えておいで。
着替えが済んだら進を迎えに来てくれるかな?」
頷いて更衣室のほうに歩いていったユキに
「変なものだったら着るなよ。どうせ兄貴が用意したものなんだから・・・」
と言った僕の頭を小突いてから更衣室へ連れ込まれてしまった。
更衣室の一番奥にかかっている衣装を見て思いっきり嫌な顔をしていると、
「何だ進、いつまで駄々をこねている?いい加減覚悟を決めろ!」
面白そうに笑っている兄貴の顔、その後から覗いている面々。
「何でこんなもの着なきゃいけないんだよ。それも俺のだけ微妙に違うんだ!!
何か魂胆でもあるのか?」
笑っているやつらを睨み付けてみる。
「とんでもない、ただ単に楽しいパーティーを楽しみたいだけじゃないですか。
ネエ、みなさん?」
と、とぼけた答えを返してきた。
「第一エスコートする相手がいるのは古代さんだけでしょう?」
「そうだよ古代。俺だってエスコートできるんならしてるぞ。
俺の彼女なんか空の上だからな。」
なんて言われたら着替えないわけにはいかなくなるだろう・・・
しかなく着替えを済ませてユキが来るのを待っている間も色々と言いたいことを言ってくれる仲間達。
もう、何も言い返す気力はない。
「そろそろユキさんの仕度出来るころですよ」と、南部が言ったときノックの音が聞こえた。
「ほら、古代さん、早く出て」背中を押されてドアを開けてみた。
そこに立っていたユキの姿に言葉も出ない。
「ボーっとしてないでほらいくぞ。」兄貴に小突かれてしまった。
先に行く兄貴達の後ろを少し離れてユキと歩いていく。
「そのドレスよく似合っているよ」耳元でそっと呟いたつもりだったのに・・・
聞かれていたなんて・・・
ヤマトのメンバーの耳はどうなっているんだか。
この後しっかりからかわれる事になるなんて思いもよらなかった。
「パーティーってほとんどヤマトのメンバーだけじゃないか?」
呟いた僕の声を聞いた兄貴が
「当たり前だろう?今回はお前達を驚かすだけだったんだ。
いつまでこの平和が続くかわからないだろう?
だから、楽しむときはみんな一緒に楽しもうと思ってな」
ウィンクひとつ。
「だからって、こんな格好させなくてもいいじゃないか!
もっと普通のパーティーにすること考えなかったのかよ」
「いいじゃないか、この後ちゃんと、ふたりっきりにさせてやるから。
ほら、このホテルのキーを渡しておくから適当な時間になったらこっそり抜け出せよ。
うまく逃げ出せればの話だけどな。」
笑いながら逃げていく兄貴に文句のひとつでもと思っていると
「こんなところにへばりついていないでこっちに来てください、古代さん、ユキさん」
声をかけられたほうへ振り返るとニコニコと笑っている二人・・・
「何をさせようとしているんだ?このパーティーの主催者さんよ。」
半分冗談交じりに問い詰めてみると。
「いえね、ユキさんのドレス姿を古代さんに見せたかっただけなんですよ。
こんな時じゃないときちんとエスコートしているところを我々には見せてくれないでしょう?」
「当たり前だ、この間の花火大会のときといいくだらないことばかり考えていると、
ほんとにヤマトに乗ったときの訓練計画、南部と相原だけ特別メニューにしておくからな」
「そんな〜、公私混同しないでくださいよ〜」
「あはは・・・、冗談だ。楽しいパーティーはいいけど、こんな格好させられたお返しだよ。
この前ちゃんといっておいただろう?俺達で遊ぶなって。」
「冗談なんかでヤマトの訓練計画立てないでくださいよ。
それでなくてもこのところ新人訓練ばかりなんですから・・・」
ぶつぶつぼやく南部たちに
「俺たちも適当なところで退散させてもらうからな。
人を出しにして開いたパーティーだ、後のことは任せておくからな。
それじゃあ俺たちも楽しんでくることにしようか?なぁ、ユキ?」
「えぇ、ほんとびっくりしたのよ。こんなドレスが更衣室にかかっていたときは。
私まで巻き込まないでね。この次は」
にっこり笑って、しっかりと釘をさしているユキ。
南部も相原も苦笑いをしながら逃げていってしまった。
「俺たちも楽しんでから逃げ出そう。泊まるところは兄貴が用意してくれたからね」
そう言ってユキとパーティーを楽しむことにした。
この後こんな風にワイワイ集まることが出来ることを祈りながら・・・
この日のユキの衣装はというと、
蒼いサテンの生地で体にフィットしているマーメイドラインのカクテルドレス。
それに対して、僕はシルバーグレーのタキシード。
まったく誰がこんな衣装を揃えたのか大体の見当はつくけど・・・
ありがたく頂いておきます。兄さん。
end