・・・・・・ばか・・・




第二の地球を探すため、大和で旅立って半年。

人類が移住するのには色々と条件が出され、その条件に一つでも合わない惑星は候補からはずれ・・・

手元の資料には、移住不可能という文字の書類ばかり・・・

次に探査予定の惑星も・・・






「艦長、この惑星の探査結果です」

一枚のメモを渡され僕は

「ここも移住するには地盤が弱いんだな・・・」

ほぅとため息を漏らすと

「仕方ありませんん、安全に移住できるところではなくては・・・」

「そうだな・・・

ユキ、ヤマトに帰る準備をしてくれ。

3時間後にはヤマトに帰る」

「わかりました。艦長はどこかへお出かけですか?」

「ああ、100メートルほど先にある木にお別れを入ってくるよ」

「気をつけてください、あの木の周りは足元が悪くなっていますから・・・」

「わかった、30分ほどしたら戻るよ」

ユキに行き先を告げ、この惑星に自生している木のところまで向かう。




太く、大きな木下に立つと、子供のころを、思い出してしまう。

今はもう跡形も残っていない大きな木下のバス停。

そんな事を思い木にもたれかかっていた。

呼ばれたほうへ顔を向けるとユキが手を振りながらこちらへ向かってくる。

「ユキ、何かあったのか?」

「いいえ、何も・・」

「ならどうして?」

「たまにはいいでしょ。この木、何か気になることでも?」

「うん、三浦に住んでいたときの木に似ていたから・・・」

「そう・・・古代くんの思い出の木に似ているのね。

ここに移住できればこの木ともお別れすることなかったのにね」

「仕方ないさ、ここの地盤を考えると・・・」

そのとき頭の上のほうで嫌な音が聞こえてきた。

とっさにユキの手を引き、木から離れる。

大きな木がゆっくりと僕らのほうへ向かって倒れてくる。

ユキを抱え込み地面に伏せる。

大木は僕の体を掠めるように倒れた。

「古代くん?大丈夫?」

僕の体の下になっているユキが声をかけてくるが・・

「大丈夫・・・・ユキ怪我は?」

「大丈夫、古代くんがかばってくれてからすり傷だけ・・・」

それをきいたとたん体中に痛みが走る。

「うっ・・・」

ユキの上から体をどかそうとして瞬間痛みで意識が遠くなる。





薄闇の中一人たたずむ・・・

遠くから聞こえてくる笑い声は今はきく事のできない人たちの声。

ああ、僕は夢を見ているのか・・・

そう思ったとき、目の前がぼんやりと明るくなる。

TVのモニターを見ているような・・・

浜辺を走る僕。

振り返ると父と母の笑顔。

遠くから駆け寄ってくる兄。

一番無邪気で、一番幸せだった時間。

ずっとこのときを眺めていたくて

モニターの中へ入りたくて・・・

手を伸ばした瞬間、体中に激痛が走る。




どこか遠くで誰かの呼ぶ声。

その声と優しい手がボクの痛みやわらげてくれる。

だんだんはっきりと声が届く

『こ・・だい・・くん・・・こだい・・・くん・・・すすむ・・・さ・・ん・・・・』

薄闇の中心配顔のユキがぼんやりと見えてくる。

「ここ・・は・・・?」

「ヤマトの艦長室よ。

あなた、私をかばって大怪我をしたのよ」

ユキのひとみから大粒の涙が零れ落ちる。



そのほほにそっと手を添えて

「また・・・心配かけてしまったんだ・・・」

僕の手を包み込み

「・・・・・ばか・・・・

あまり心配ばかりかけないで・・・」

「ごめん・・・」

いつもならここで君を抱きしめているのだろうけど・・・

今は、君の優しい手に甘えてしまおう・・・

「夢の中でね・・・

父さんや母さん、兄さんが出てきたんだ・・・

底へ行きたくて、手を伸ばしたら体中が悲鳴を上げたんだ・・・

そのときユキ、君の声とやさしい手に導かれるように戻ってこれた・・・

ありがとう・・・」

まだ、はっきりしない頭で夢出てきた家族のことを話す。

「そう・・・

きっとあの惑星の木が怪我をさせてしまったお詫びに見せてくれたのかもしれないわね。

もう一眠りするといいわ。

あなたが目覚めるまでここにいますから・・・・」

ユキの声を聞きながら僕は眠りに落ちていく。

ユキが側にいるというだけで安心して・・・




END


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