あなたとふたりで・・・



朝、目を覚ますと隣にいるはずのユキの姿が見当たらない。

あわててベッドから飛び降りる。

パジャマをはおり、リビングへと向かう。

キッチンから「おはよう」と、ユキの声が聞こえてきた。

後ろからそっと抱きしめ「おはよう」と、言ってキスをする。

「今日の予定は?」と、尋ねる僕に

「そうね、買い物にでも付き合ってもらおうかしら?」と、微笑みながら僕に言う。

「・・・買い物・・・以外の予定にしてくれ・・・」と、抗議をしても

「だぁめ。色々とそろえたいものがあるのよ」と、ちょっと睨みながら僕のほうを見る。

「何をそろえるんだか・・・」ため息混じりに呟くと、

「貴方のものに決まっているでしょう?それに、気分転換にもなるし・・・」

ちょっと困ったように微笑んで・・・

実際気分転換になるのだろうか?

巷では、例の噂がまだ囁かれていると言うのに・・・

「貴方と出かけるからいいの。噂なんて貴方が信じていてくれるから私は怖いものなんてないのよ」

と、にっこり笑われてしまうと何もいえなくなる。

「貴重な休暇を・・・もっと有意義に使いたいな」と、反撃しても勝ち目はなさそうだ。

そんな僕を見ながら「ほら、早くシャワーを浴びてきて。朝ごはんの支度しておくから」と、クスクス笑いながらキッチンから追い出されてしまった。

仕方なくシャワーを浴びに行く。


                                          


朝食を済ませエアカーに乗り込む。

「さて、お嬢様、どこから回りますか?何処にでもお供いたしますよ」ちょっとふざけてみる。

「そうねぇ、まずは、ショッピングアーケードに行きたいわ。

あそこなら何でもそろうから・・・買い物が終わったら・・・ドライブへ行きましょう?」と、僕の顔を覗き込む。

嬉しそうに微笑みながら僕の返事を待っているユキにそっと口付けて車を出す。

ショッピングアーケードの中には、買い物客でいっぱいだった。

女性とゆうものは何故こんなにも生き生きと買い物ができるのだろう?

何処からこのようなエネルギーが沸いてくるのだろう。

不思議で仕方がない。

そんな彼女の後ろから手荷物を抱えた僕の姿・・・

近い将来僕はユキにはかなわないだろう。

今だってユキには何も言えない。

ヤマトの仲間たちには見せられない・・・

が、しかしこんなときにこそ必ず誰かに見られてしまう。

この次ヤマトに乗るときいい話の種になっていることだろう。

ふうっと、ため息をついた僕に気がついたユキが「疲れた?」と訊いてきた。

僕は「あぁ」と一言だけ答える。もうしゃべる気力がない。

仕方ないなぁという感じで僕のほうを見ている。

「少し休む?」と聞いてきたが、早くここから逃げ出し僕は、

「買い物が終わったのなら、ドライブに行こう」とユキの手をひっぱって、駐車場のほうへ歩いていく。

ユキの機嫌は?と、振り返ってみたが何のことはない。ニコニコしながら着いてくる。

「どこまで連れて行ってくれるの?」と聞いてきたので、ちょっと考えながら

「今からじゃ遠くまででかけられないだろう?森林浴とでも行きますか?」ちょっとおどけて答えてみる。

「森林浴かぁ。疲れている古代君にはいいかもね」と、答えが返ってきた。


                                                     


エアカーを緑化地区へと走らせる。

緑の木々に囲まれているとさっきまでの疲れも取れてくるようだ。

森林浴を楽しみながらユキのほうを見る。

木漏れ日がチラチラとユキに降り注いでいる。

何も考えず日が傾くまでユキの隣でくつろいでしまった。

何かいわなければと思う。でも、言葉が出てこない。

そっとユキを引き寄せて、耳元で小さく「愛している」と囁いてみた。

耳まで真っ赤になりながら「私も愛しているわ」と囁いてきた。

そのまま人目もはばからずに抱きしめてしまった。

緑化地区の真ん中で・・・

このまま二人だけの時間が続けばいい・・・

そんな僕の心の中の呟きが聞こえたのかユキがそっと顔を上げた。

どちらからともなく口付けを交わす。

触れるだけのやさしい口付けを・・・


                             


夕日の中を二人で寄り添って歩く。

何もいわないで、ただそこにいる存在だけを確かめるように。

このまま二人だけの世界へ入り込んでしまいたくなる。

このままいつまでも二人で歩いていけるのだろうか?

ユキに問いたくなる。

「こんな僕といて君は幸せなの?」

突然こんな質問をしていまいキミを驚かせてしまった。

一瞬びっくりした顔を僕に向けて、でも、にっこりと微笑みながら

「そんなあなたと二人で歩いていきたいのよ」と、僕のほうを向いた。

もう、言葉ではいいあらわすことができなくてユキを思いっきり抱きしめて

「キミといつまでも歩いていきたい・・・」と、小さな声でユキの耳元に囁いた。

「あなたと二人でいつまでも・・・」

僕の一番大切なユキとふたりでいつまでも・・・

この幸せなときがいつまでも続きますように・・・

そんな願いを誰にすればいいのだろう。

たった一人の僕の女神様どうかこんな僕を見捨てないで・・・




                                      END